台風時期になると考えてしまうHFアンテナ。
年々何かとアンテナへの風当たりが強く、HFを楽しむにも命がけです。
簡単にアンテナをベランダに設置/撤収ができるモービル用アンテナ、また自宅でもモービル用最近ではコンパクトで手軽にH F 運用を楽しめるアンテナが各社から発売され注目されています。
手軽に運用できるアンテナとグランド(アース)について考えてみました。
HFモービルホイップアンテナを自宅で楽しむ
モービル用のHFホイップアンテナを自宅で使用することで、簡単にHFを楽しむことができます。
筆者はHF用モービル・ホイップを3.5MHz や7MHzで長年愛用してきました。
モービル運用だけでなく自宅のベランダに設置するなど、あまり目立たず比較的軽量、コンパクトで完全防水、設置部をしっかりしておけば強風にも耐えるので安心です。
バルコニーの手すりにキャリアパイプ用の基台(写真1)を取り付け、アース処理(後述)を行います(これがポイント!)。ちなみに筆者はアース処理を高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-MEW56を使用しています。
あとはエレメントの長さを調整して運用周波数のSWR調整するだけです。
HFモービル・ホイップを大別すると、①モノバンド②多バンド対応モノバンド ③マルチバンドに分かれます。また最近ではベランダ専用に開発されたアンテナもあります。
① モノバンド
HF モノバンド・モービル・アンテナは、ベースローディング・タイプとセンターローディング・タイプ(写真3)の2 種類が主流で、各社3. 5〜50MHz 用のラインアップがあります。
ローディング・コイルの位置が給電部寄り(ベースローディング)よりもエレメントの中ほど(センターローディング)が飛びに有利と言われていますが、使い勝手や調整のしやすさではベースローディングに軍配が上がる傾向があるようです。
オン・エアしたいバンドを変えたいときはアンテナを付け替える必要があり、不便を感じることが、トラップや別バンド用のパーツがない分、スリムで軽量というメリットがあります。
写真2 ベースローディング・タイプのホイップアンテナ
写真3 センターローディング・タイプのホイップアンテナ
② 多バンド対応モノバンド
モノバンドなのに多バンドとは 不思議な形容ですが、電動でアンテナの長さを変えて希望のバンドで使う多バンド対応アンテナです。
スクリュードライバ・アンテナと呼ばれ運用時に無線機(またはコントローラ)操作でSWR調整するタイプで、簡単に調整が出来るので人気があります。例えば第一電波工業では3.5〜30MHz 対応のSD330、八重洲無線では7 〜430MHz 対応のATAS-120A(写真4)です。
八重洲無線のATAS対応HFトランシーバーをお持ちでしたら、このアンテナがお勧めです。筆者も愛用していますがTUNEボタンを押すだけでチューニングしてくれるので大変便利です。
どちらのアンテナも最長時は2m 以内、重量は約1kg とモービル・アンテナとしては重量があります。これらのアンテナを建物に取り付けて使用することも考えられており,特にATAS-120A にはオプションで50〜430MHz用 ラジアルATBK-100 が用意されています。HF で運用するには別途アース処理が必要で高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-MEW56をお勧めします(後述)。
写真4 スクリュードライバ・アンテナ7
③ マルチバンド
マルチバンドアンテナはホイップアンテナに各バンドの専用エレメントが枝分かれしているアンテナで、あらかじめ各バンドのエレメントでSWR調整しておく必要があります。
例えば第一電波工業では7/(10/14)/21/28/50/144/430MHz帯のモービルアンテナHV7CX(全長1.9m)や、コメット28/50/144/430MHz モービルアンテナUHV-4 (全長 1.39m)などがあります(写真5)。 また、最近ではベランダに特化した専用アンテナもアンテナメーカーから販売しています(後述)。
写真5 マルチバンド
ベランダに特化した専用アンテナ(筆者も使用している一押し!)
CQ誌2020 年3 月号(p.44-45 で紹介)で紹介したコメットUHV-9(写真6)と、2022年3月号(p.148-149 で紹介)で紹介したUHV-10(写真8)がベランダに特化したアンテナです。どちらもマルチバンドアンテナで、放射線状に各エレメントが用意されています。モービルホイップと同様、あらかじめ全てのバンド調整を済ませてから使用するタイプで、モービルホイップと同様アース処理が必要です(後述)。
ローバンドは特に共振周波数の帯域が狭くなってしまいますが、周波数が決まっているFT8 を楽しむには無線機のアンテナチューナを入れることで問題なく使用することができます。何よりもバンドのQSYが簡単に行うことができるので、各バンドのワッチがスムーズに行うことができるのでベランダの常設に適しているといえるでしょう。では、簡単にUHV-9とUHV-10の特徴にふれてみましょう。
UHV-9(HF 〜UHF 9 バンド)
UHV-9(写真6)は、3.5/7/14/18/21/28/50/144/430MHz とHF 〜UHF までの9 バンドを1本で運用可能です。入門用としてお勧めしたいアンテナです。価格も安く33,000円税込み(2023年11月の価格)なんと1バンドあたり3,600円程度モノバンドアンテナを揃えるよりコスパが良い!
3.5MHzのコイルを含め全長約2.6mとコンパクトで、重量も約900gで1kgを切る軽さです。
UHV-9は頭が重いので、強風が天敵です。基台はしっかりと設置し、アンテナはCQ誌 2020年4月号で紹介したコメットCEH-01脱落防止エレメントホルダーで脱落防止をしておくことをお勧めします(写真7)。
写真6 CQ誌2020 年3 月号( pp.44-45 で紹介)で紹介したコメットUHV-9
写真7 コメットCEH-01脱落防止エレメントホルダー
UHV-10(HFに特化したWARC対応9バンド)
UHV-10(写真8)は、3.5/7/10/14/18/21/24/28/50MHzの9バンドに対応したHFベランダ用アンテナです。
価格も安く38,500円税込み(2023年11月の価格)なんと1バンドあたり4,300円程度モノバンドアンテナを揃えるよりコスパが良い!UHV-9との違いは,144/430MHzを外し、WARCバンドを追加しHF9バンドに対応しています。各バンドのコイル・エレメント部分がより長くなり、調整もエレメント・スライド方式を採用しています(UHV-9はエレメント・カットで対応)。また、給電部の部分がUHV-9と同様「折曲機構」になっているため、調整やコイルの付け外しも簡単に行えます。
アンテナの長さは3.5MHzのエレメント先端から2.15mとUHV-9と比べ5cmほど長くなりました。他のバンドもエレメントが長くなりUHV-9より飛びが良くなりました.重量はUHV-9と比べ1.2kgと300g重くなりましたが、組み立てたアンテナは重量配分がよいのか、持ってみても軽く感じます。
UHV-10は外径13mmのアルミ・パイプを採用したため、UHV-9と比較して耐風速が35m/sにアップしています。ベランダに基台をしっかり設置しておけば風にあおられることもなく安心感を得られるでしょう。
現在、筆者もこのアンテナをベランダに設置していて各バンドFT8を楽しんでいます。
写真8 2022年3月号(p.148-149 で紹介)で紹介したUHV-10
UHV-9とUHV-10もアース処理(後述)が必要で高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-NEW56をお勧めします。
また、50MHz帯用 ロッド式ラジアルエレメントCGW-Telescopic22をプラスすることで50MHzが簡単に調整が出来ます。 筆者も仕様していますがロッド式なので約1.6m伸ばし微調整するだけで簡単に調整ができます(写真9)。
写真9 50MHz帯用 ロッド式ラジアルエレメントCGW-Telescopic22
〜鉄骨・鉄筋建物なら結構カンタン〜 アース処理を考える(高田企画のラジアルキットMVF-RA56とMVF-MEW56)
ここまで紹介したホイップ・アンテナを建物に取り付ける場合、V/UHF のノンラジアル・ホイップ・アンテナをベランダに設置するときは基台とアンテナを付けて同軸ケーブルで無線機につなぐだけですが、HF のホイップはアース処理が必要です。この処理は設置環境に応じて次のように処理すると良いでしょう。
木造一戸建の場合
ベランダにアンテナを設置した場合は、運用希望バンドのおよそ1/4λの長さの電線をアース側に接続して空間に張ります(複数バンドがある場合はバンドごとに)。張った電線はラジアルと呼び、周囲の建物などの影響も受けるので長さ調整も必要になるでしょう。ラジアルを張るのが厳しい場合は、もし屋根が金属製のトタンの場合は、トタン屋根に高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-NEW56を束ねてのせる、または金属製物置の屋根にラジアルキットMVF-RA56やMVF-NEW56を束ねてのせて静電容量結合させてアースをとるとよいでしょう。
マンション、アパマン (鉄筋コンクリート/ 鉄骨造)の場合
建物の鉄筋や鉄骨と導通していそうな金属部分を見付けて、その部分とアンテナのアース側をつなぎます。しかしそんな好都合な部分は見付からないことがほとんどです。
そこで、アンテナのアース側に高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-MEW56を束ねてベランダなどの床(スラブ)の上に置き、建物の鉄骨や鉄筋と静電容量結合させます。
高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-MEW56はCQ誌でも紹介した製品です。
MVF-RA56はキットで、部品のみの販売で自分で制作するタイプで完成品です。
MVF-MEW56は完成品で要望が多数ありましたので販売を始めました。自分で制作する手間を省きたい場合は完成品を購入するとよいでしょう。
高田企画のラジアルキット MVF-RA56やMVF-MEW56の設置方法
コツとしてまず鉄骨(柱や梁はり)のある場所の目星を付けます。ラジアル線を少しずつ移動しSWR が一番下がる場所を探ります。
鉄骨に合わせてラジアル線を張るか、鉄骨の部分の上にラジアル線をまとめて置くようにします。放射線状に張るよりも、ごちゃっとまとめた方がSWR が下がりやすい傾向があります(写真10)。
写真10 建物の鉄骨や鉄筋と容量結合させる
建物の鉄骨・鉄筋部分を探すには? 建物の鉄骨部分を探す方法の一つに3,000 円ぐらいで購入できる壁裏探知機(金属探知機)を利用する方法もあります(写真11). 必ず見つかる保証はありませんが試してみる価値はありそうです。
写真11 探知機の例モノタロウ MRO-533
ラジアルキットの購入方法
高田企画のラジアルキットMVF-RA56やMVF-MEW56はどちらもBASEで購入可能です。下記のURLから購入できます。
支払いはクレジットカード決済で簡単に購入が可能です。
高田企画のBASEショップのURL
https://takadakikaku.buyshop.jp/
アンテナ調整便利なアイテム
筆者は以前Nano-vnaを使用していましたが、最近では手軽に使えるアンテナアナライザー・コメットCAA-500 MarkⅡを使用しています(写真12)。国産なので壊れてもすぐに対応してくれるので安心です(今まで一度も壊れたことはありません!)。
写真12 コメットのアンテナアナライザーCAA-500 MarkⅡ